山本会計事務所


税務コラム NEWS

    
【相続に関する税理士アンケート調査】          2006年4月20日
  •  相続に直面しているのは「50代の男性」がもっとも多く、「相続税の 有無」「遺産分割」「生前贈与」について関心が高い。相続税がかかる 場合は、7割以上が初回の相談から1年以内に申告を完了している
     一昨2005年12月、日本相続新聞社が、比較的相続に強いといわれて いる全国500の税理士事務所を対象に「相続に関する税理士アンケー ト調査」を行ったところ、こんな相続人像が浮かび上がってきた。調査 は郵送方式で実施したが、270の税理士事務所から回答をいただいた (回収率54%)。エリア別では東京首都圏が84、東海圏が45、関西 圈が27、その他の地方が114事務所だった。
     今回の調査は、実際に相続の相談および申告を手がける税理士の視 点を通して「現代の相続」を把握するのがねらい。6つのポイントに絞って質問を用意した。
    まず、第1の質問として「2005年に係わった相続に関する相談件数」 を聞いたところ、回答を寄せてくれた270事務所全体で7644件。あく まで、この調査における1事務所あたりの平均を求めると、28.3件と なっている。調査結果によると、東京と関西の2エリアの事務所が、ともに300件程度の相談件数をこなしている。
     第2の質問「2005年に行った相続税の申告件数(同年内の予定も含 む)」に対する回答も、最初の質問結果とほぽ同様の傾向が出ている。 総数2862件に対し、平均は10.6件。エリア別で見ると、東京、関西、東海圈に100件を超す事務所がいくつかあった。質問1と2の回答からは、相談件数も申告件数も、幾つかの特定の事務所に集中していることがうかがえる。

     税理士も特化事務所の間で住み分け 男性の依頼人が7割コアは団塊の世代相続は高い専門性と豊富な経験が要求されため、一般の税理士事務 所と、この分野に特化した事務所との間に住み分け、2極化が進んでい るといわれているが、上記2つの質問に対する回答は、それをはっきり 裏付けた結果になっている。
     資産税の実務部門とコンサルティング部門を備えた大型事務所を中心 に、今後、こうした傾向はますます強まると思われるが、今回の調査で もう一つ明らかになったことがある。相続に特化した事務所の間でも、総合病院と個人医院のような住み分けが進んでいることだ。中小の事務所を中心に、申告を必要としない「庶民の相続」の事前対策や「争族」対策に力を入れる動きが目立つ。年間40件から80件余りの相談業務をこなしながら、申告数が20件に満たない事務所が少なからずあった。ここ数年、相続税を課税される人の割合が低下し、5%台を割っている一方で、一般の相続に対する関心が急速に高まっている。「あえて申告にはこだわらない」(A税理士事務所・関西)という特化のあり方は、時代のニーズに対応した戦略といえるかもしれない。
     第3の質問「依頼人の性別(比較してどちらが多いか)」に対し、「男 性」と回答したのは195事務所で、全体の約72%を占めた。これに対 し「女性」と回答したのは72事務所(約27%)で、3事務所(約1%) が無回答だった。
     単純に比較すれば、男性の依頼人が女性の約2・7倍になる。人口構成からみれば、むしろ女性が多い方が自然だと思われが、東京のB税理士事務所の所長によると「兄弟姉妹など相続人が複数の場合、配偶者がいても、長男が相続人代表になるケースが多い。結果的に、私たちも窓口になる男性と、お付きあいする機会が多くなる」というのが実態のようだ。

     第4の質問「一番多い依頼人の年代層」については、「50代」と回答したのが132事務所、「60代」が87事務所で、この2つの年代を挙げた事務所が全体の約81%に上った。次いで「40代」(27)、「70代以上」(18)、「30代」(3)の順で、「20代以下」はゼロだった。
     当初、編集部では、相続人(子)だけでなく、将来、被相続人になる立場の人(親)が事前対策の相談に訪れることも想定して、第3〜4の質問を設定した。しかし、これはどうやら空振りだったようで、集計結果を見る限り、「依頼者」はほぽ「相続人」と判断してよさそうだ。いくつかの事務所に電話で後追い確認をした結果も、「親御さんがご自分の相続の相談に来られるというのはごく少数で、ほとんどは相続人 の方からの依頼」ということだった。この数字からは、50〜60代が、相続に直面している中心世代であることがはっきりうかがえる。おそらく、そのコアを形成しているのは団塊世代だろう。今後しばらくは、良くも悪くもこの世代が日本の相続のあり方に、大きな影響を及ぼすことは間違いない。

     第5の質問「初回の相談を受けてから相続税の申告までの期間」で最も多い回答パターンは、「1年以内」の約49%、次いで「半年以内」の約28%となっている。他はぐんと少なくなり、「2年以内」が約8%、「6年以上」が約6%、「3年以内」と「5年以内」が約2%、「4年以内」「6年以内」はゼロだった。「半年以内」は無条件で10ヵ月の申告期限をクリアしているケース。「1年以内」もほぽクリアしていると考えられる。これ以外は、相続人同士の話し合いがつかず、期限以内に申告ができなかったということになる。税理士の業界には「1年で申告できない相続は、何年たっても決着しない」という言葉があるそうだが、この集計結果からも、1度こじれると「争族」はなかなか解決しないということがよく分かる。
     日本では毎年、約100万件の相続が発生しているが、そのうちの約1万件が相続人同士の話し合いがつかず、「遺産分割事件」として家庭裁判所に申立てが行われている(『司法統計年報』)。これは、年間相続件数の約1%に相当するが、統計上に表れないものを入れれば毎年10万件の「争族」が発生していると指摘する専門家もいる。
     この質問の回答で印象に残ったのは、「6年以上」と答えたC税理士事務所(関西)の回答用紙の欄外に書き込まれた「40年間、引き続き相談を受けているケースもあり、千差万別です」というコメント。「6年以上」は揉めた期間ではなく、「信頼関係」の長さだということだった。

     最後に、事前対策を含む「相談内容」の傾向について質問した。あらかじめ質問表に20項目を掲げ、複数回答方式で多いものを選んでもらったところ、第1位は「相続税の有無」で、約78%に上った。次いで「遺産分割」(約71%)、「生前贈与」(約69%)、「節税」(約63%)、「事業承継」(約58%)、「遺言」(50%)が、それぞれ50%を上回った。50%以下で多かったのは、「土地活用」(約42%)、「納税資金」(約36%)、「生命保険」(30%)の3項目だった。第1位の「相続税の有無」、つまり「相続税がかかるかどうか知りたい」という要望は、どうやら相続を経験した人にとって、永遠のテーマのようだ。D税理士事務所(東海)の所長は、「遺産の大小にかかわりなく、ほとんどの方に共通する関心事といっていいでしょう。まず、この問題をはっきりさせないと、相続は始まらないといういうことです」という。
     近年、相続対策は、争族を防止する「遺産分割対策」と、納税資金の確保や節税を目的とする「相続税対策」を分けて行うべきだと主張する専門家が増えているが、2位以下で上位に並んだ項目を見ると、こうした考え方が一般にもかなり浸透してきていることがうかがわれる。とくに「遺言」が6位に入ったことは注目される。これで「成年後見」への関心がもう少し上がれば、日本の相続の様相もずいぷん変わってくるのではないだろうか。

     

     

    (出典:日本相続新聞社)

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    公認会計士・税理士
    山本 祐一

 経歴

   1956年 茨城県神栖市波崎生
   1975年 銚子商業高校卒業
   1979年 専修大学商学部卒業
   1987年 監査法人トーマツ退社
   1987年 山本会計事務所開業

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