税務コラム NEWS
【税理士に証明者としての権限】 2003年11月4日
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商法改正 現物出資に評価証明 色めき立つ税理士業界
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商法改正により現物出資に必要となる財産評価の証明者範囲が拡大され、税理士に証明者としての権限が与えられたことから、税理士業界が色めき立っている。今回の改正で会社設立や増資がしやすくなったほか、最低資本金制度が期間限定で撤廃されるなど起業家への追い風が吹いているなか、一方では、税理士の職域拡大に向けた動きも加速している。
評価証明者の範囲拡大は、今年4月1日に施行された商法改正によるもの。従来、現物出資をする際には、その出資財産の価格について、原則として裁判所が選任する検査役の調査か、「弁護士」による証明といった煩雑な手続きが必要だった。とくに、裁判所に検査役選任の請求をすると、厳格な手続きにより相当な時間とお金がかかる。こうした問題を解決し、現物出資制度をより身近かなものにするという目的で、評価証明者の範囲が税理士や税理士法人、公認会計士、監査法人などの資格者にも広げられたわけだ。たとえば、税理士から現物出資における財産の価格証明を受ければ、検査役の選任を裁判所に請求する必要はなくなる。
こうしたインフラの整備に、魅力的なセールストークが増えた格好の税理士業界は、職域拡大のチャンスと捉えている。現物出資の手続きが身近になったことで、現金がないために持っている能力を生かせない起業家たちが、スムーズに会社を設立できるようになった。
また、会社設立後の財産引受けや、設立後2年以内に20分の1以上の資産を取得する事後設立、増資なども円滑に行える環境が整ったといえる。
日本税理士会連合会ではさっそく、評価証明に関するリーフレットを作成。その下部組織で単位会でも研修会を企画する会合が増えてきた。税理士個人の間でも、会社設立のサポート態勢を整えるなど、ビジネスチャンスを生かす土台づくりの準備に余念がない。
そもそも、商法に税理士・税理士法人が明記されるのは初めてのこと。これまで公認会計士に限られていた商法の分野に進出したことは、単なる職域拡大にとどまらず、"今後"への期待を膨らませる大きな要因となっている。
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