税務コラム NEWS
【見直される値引き税務】 2003年12月8日
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パソコン激安販売 見直される値引き税務
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大手商社「丸紅」による9割のディスカウント販売をきっかけに、商品の値引き税務が取り沙汰されている。同社が運営するネット上のサイトで19万8千円で販売する予定だったパソコンを、"0"を一つ落としてしまい1万9800円で価格を表示したところ、申込みが殺到。同社は、一時は契約のキャンセルを求めたが、会社の信用を重視し、結局、約1500台を表示した価格通りに販売するという珍事を起こした。不況で物が売れないときだけに、企業の値引き販売は日常茶飯事。ただ、税務署に利益調整と受け取られる可能性もあるだけに、その取扱いには十分な知識が必要だ。
一般に商品の値引き販売を行った場合、税務上は「割戻し」と「値引き」に区分したうえで処理しなければならない。
「割戻し」とはいわゆるリベートのことで、商品の一定期間の販売金額によって、あらかじめ決めておいた一定金額を返金すること。たとえば、一般消費者に対して、対象商品を買えば一定額を払い戻すキャンペーンを組む場合などがそれだ。売上割戻し金額は、その金額の算定方法が適正で、それが契約などによって相手に明示されていることなどを条件に、商品を販売した日の属する事業年度に計上することが認められる。
「値引き」は、商品に傷があるなどの理由で価格を引き下げること。値引きで注意したいのは、資本関係があるなどの特定の相手に対して極端なダンピングをした場合、値引き相当額が税務署から交際費や寄付金とみなされる場合がある。ほかに、メーカーなどが自社製品を社員に販売する場合、販売価格が原価割れしていたり市場価格の70%未満だったりすると、社員に対して経済的な利益を与えたことになる。
消費税については割戻し・値引きがあった場合、その値引きや割戻しに対応する消費税額相当分を、売上げに対する消費税額や仕入れに含まれている消費税額から差し引くことになる。原価割れしていた場合には、その差額が還付される。
ところで、先述の丸紅のケースは、いわば事故。そこで、一度19万8千円で売り上げたとして、差額の17万8200円を販売促進費もしくは雑損費として記帳することも考えられるが、「会計監査の場では、虚偽に当たるのではないか」(国税庁)とみられている。 -
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