税務コラム NEWS
【相続税評価額での土地譲渡を認める判決(東京地裁)】 2007年10月17日
- 親族への土地譲渡がみなし贈与の適用を受けるかどうかで争われた事件で,東京地裁は,相続税評価額と同水準かそれ以上の価額を対価として土地の譲渡が行われた場合は,原則として相続税法7条の「著しく低い価額」の対価による譲渡とはいえないなどとして,原告の主張を全面的に認める判決を言い渡した(平成19年8月23日判決,平成18年(行ウ)第562号)。これについて国側は控訴せず,本件は東京地裁判決で納税者の勝訴が確定した。
本件は,土地を親族らへ路線価に基づく価額で譲渡したことに対して,対価を伴う取引の場合に相続税評価額を適用することは適切ではないなどとして,贈与税の決定・更正処分を受けたことによる。
相続税法7条では,著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合,対価と譲渡時の時価の差額を贈与により取得したものとみなすとしている。
判決では,相続税評価額と同水準の価額かそれ以上の価額の対価で譲渡が行われた場合は,原則として「著しく低い価額」の対価による譲渡とはいえないとし,譲渡者が自己の所得税の軽減を意図し,また,親族に一定の利益を享受させる意思があっても,相続税法7条のみなし贈与の適用は左右されず,本件は明らかに異常で不当な租税回避を目的とした取引には該当しない,として国側の主張を退けた。
しかし,著しく低い価額の対価で譲渡があったかどうかは,あくまで個々の取引について取引の事情や当事者間の関係等を総合勘案し,実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうかで判定するという現状の扱いに変更はないとされているので,注意したい。 - (提供:税研情報センター)